墓じまいの後の遺骨の行き先|散骨・樹木葬・永代供養・手元供養を、決まりと手続きで比べる
この記事のまとめ
- 遺骨を墓地や納骨堂に移す行き先(樹木葬、合葬墓など)は、いま遺骨がある市区町村長の改葬許可が要ります。根拠は墓地、埋葬等に関する法律の第2条第3項と第5条です。
- 散骨は、東京都と横浜市が「法による手続き」「許可手続き」は要らないと案内しています。厚生労働省のガイドラインは、題のとおり散骨事業者に向けた文書です。
- 墓から取り出して散骨する場合の改葬許可の扱いは、東京都は「区市町村により取扱いが異なる」、町田市は「必要ありません」と案内しており、遺骨がある市区町村への確認が要ります。
- 公営の例では、千葉市の合葬式樹木葬墓地が1体6万円(粉状は4万円)、東京都立霊園の樹林墓地が1体9万5,000円から11万2,000円、秋田市の合葬墓が1体1万7,000円です。いずれも令和8年度は期間を決めた募集と抽選で、納めた遺骨は返してもらえません。
- 手元供養は、東京都が墓地埋葬法に自宅での焼骨の保管について特に規定はないと案内しています。町田市は、墓地から自宅へ引き取る場合の改葬手続きは不要としています。
墓じまいで取り出した遺骨の行き先は、法律のうえでは大きく2つに分かれます。樹木葬や合葬墓のように、墓地や納骨堂へ移す行き先は、いま遺骨がある市区町村長の改葬許可が要ります。散骨と手元供養は、墓地埋葬法に許可の制度がなく、条文の「改葬」にも行き先として挙がっていません。ただし、お墓から遺骨を取り出す段階の手続きは、市区町村によって扱いが異なります。
この記事は、行き先ごとに「改葬許可が要るか」「どんな書類が要るか」「どこに申し込むか」を、法令と自治体の公式ページに書かれていることだけで比べます。費用の相場や、どの供養が望ましいかは書きません。墓じまい全体の順番は墓じまいの手順を7段階でにまとめています。
4つの行き先を一覧で比べる
| 行き先 | 改葬許可 | 書類や手続きの窓口 | 申込先 |
|---|---|---|---|
| 樹木葬・合葬墓(公営の例) | 納骨済みの遺骨を移すなら要る(東京都公園協会の手引、千葉市のしおり) | 埋蔵・収蔵証明書、改葬許可証など | 千葉市は平和公園管理事務所、東京都は都立霊園、秋田市は生活総務課など |
| 散骨 | 散骨に許可や届出の制度はない(東京都、横浜市)。墓から取り出す手続きは市区町村で異なる(東京都) | 契約書、費用の明細書、散骨証明書は事業者が出す(厚生労働省ガイドライン) | 行政の窓口はなく、散骨事業者と契約する |
| 手元供養 | 法律に規定はない(東京都)。墓から自宅へ引き取る場合は不要(町田市) | 町田市は遺骨引渡証明書をもらうとよいと案内 | 申込先はない。墓地の管理者に尋ねる |
| 永代供養 | 寺院や民営の永代供養墓は、この記事では公式に確かめられていない | 永代供養墓へ改葬する場合も手続きが要る(町田市) | 移す先の管理者 |
表の「要る」「不要」は、それぞれの出典に書かれていた範囲です。ほかの市区町村では扱いが違う場合があります。
法律が決めていること
墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)は、次のように決めています。
- 第2条第3項:「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、または埋蔵・収蔵した焼骨を、他の墳墓または納骨堂に移すこと
- 第2条第4項:「墳墓」とは、死体を埋葬し、または焼骨を埋蔵する施設
- 第4条:埋葬や焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域で行ってはならない
- 第5条:改葬を行おうとする者は、市町村長(特別区の区長を含む)の許可を受けなければならない。改葬の許可は、焼骨が現にある地の市町村長が行う
- 第14条:墓地の管理者は、改葬許可証などを受け取った後でなければ、焼骨を埋蔵させてはならない。納骨堂の管理者も、改葬許可証などを受け取った後でなければ収蔵してはならない
e-Gov に載っている条文を確かめたところ、「散骨」「樹木葬」「永代供養」という言葉は、墓地埋葬法の条文に出てきません(2026年11月7日確認)。つまり、樹木葬や合葬墓に納める場合は、その場所が墓地や納骨堂であれば、条文の「改葬」「埋蔵」「収蔵」の決まりがそのまま当てはまります。散骨と手元供養は、法律が名前を挙げて決めているわけではありません。
散骨:許可の制度はないが、守る基準と地域の決まりがある
国と自治体の案内
東京都は、散骨が墓地埋葬法に規定されていない行為であるため「法による手続きはありません」と案内し、念のため地元の自治体に確認することを勧めています。横浜市は「現行の法令上の許可手続は必要ありません」としたうえで、厚生労働省の「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」に沿って、場所や関係者、自然環境への配慮が必要だと書いています。
厚生労働省のガイドラインは、題のとおり散骨事業者に向けた文書です。目的は、散骨が関係者の宗教的感情に適合し、公衆衛生などの見地から適切に行われることとされています。主な内容は次のとおりです。
- 焼骨は、形が見えないよう粉状に砕く
- 陸上では、あらかじめ特定した区域(河川と湖沼を除く)で行う。海洋では、海岸から一定の距離以上離れた海域で行い、距離は地理条件や利用状況を踏まえて設定する
- 地域住民、周辺の土地所有者、漁業者などの利益や宗教感情を害さないよう配慮する
- プラスチックやビニールを原材料とする副葬品などを投下しない
- 契約は文書で行い、費用の明細書を契約書に添付する。散骨のあとは、散骨証明書を利用者に交付する
ガイドラインに書かれている「一定の距離」の数字はありません。
自治体ごとの決まり
秩父市は、環境保全条例の一部を改正し、平成20年12月18日から「墓地以外の場所で、原則、散骨をしてはならない」としています。対象は「秩父市内で焼骨を散布しようとするすべての人」です。熱海市は、海洋散骨を業として行う事業者に遵守を求めるガイドライン(平成27年7月1日)で、熱海市内の土地から10キロメートル以上離れた海域で行うこと、夏期は控えること、焼骨をパウダー状にして水溶性の袋に入れて投下することなどを定めています。
このように、散骨は国の許可制度がない一方で、場所によっては条例やガイドラインがあります。散骨したい場所のある自治体の公式ページを開いて確かめる必要があります。
墓から取り出して散骨するときの改葬許可
ここは公式ページどうしで案内が分かれています。東京都は「散骨のために取り出す場合は、区市町村により取扱いが異なりますので、必要な手続などを区市町村に確認してください」と案内しています。一方、町田市の改葬許可申請のページは、「散骨をしたいのですが、改葬の手続きは必要でしょうか?」という質問に「散骨の場合、改葬の手続きは必要ありません」と答えています。
したがって、遺骨が納められている墓地のある市区町村と、墓地の管理者の両方に、取り出すための書類の有無を事前に尋ねます。
樹木葬・永代供養の合葬墓:改葬許可が要り、公営は期間を決めた募集が中心
法律に「永代供養」の定義はありません。公営の合葬墓では、各自治体が運営の内容を自分の言葉で書いています。たとえば秋田市は、焼骨を骨箱などから取り出して他の焼骨と一緒に直接埋蔵し、「秋田市では供養は行いません」と書いています。東京都立霊園の合葬埋蔵施設(一定期間後共同埋蔵)は、使用許可日から20年間個別に保管した後に共同埋蔵する仕組みです。名前が同じでも内容が違うので、募集の案内に書かれた埋蔵の方法を読みます。
改葬許可の書類と窓口
東京都公園協会の使用の手引は、すでに他の墓所や納骨堂に納骨されている遺骨を納めるには、あらかじめ改葬の許可が必要だと書き、手順を次のように示しています。
- 遺骨が今ある墓地や納骨堂の管理者から「埋蔵・収蔵証明書」を発行してもらう(有料)
- 都立霊園の使用者は、霊園の窓口で使用許可証を見せて「使用証明書」を発行してもらう(400円)
- 遺骨が今ある墓地や納骨堂のある市区町村の窓口に、1と2を一緒に出して改葬許可証の交付を受ける
- 管理者に改葬許可証を見せて遺骨を引き取る
- 納骨のとき、使用許可証と火葬許可証または改葬許可証を都立霊園の窓口に出す
火葬後に一度も埋蔵していない遺骨なら、火葬許可証で納骨できます。自宅に保管してきた遺骨を申し込む場合、千葉市のしおりは火葬許可証の原本を、秋田市は火葬許可証と、寺院などに預けている場合は遺骨保管証明書を求めています。千葉市の市営霊園から移すときは、市営霊園の管理事務所で改葬許可申請をしたうえで、市役所生活衛生課で改葬許可証を受け取る流れです。手数料は300円と案内されています。
3つの公営の例
| 自治体・施設 | 使用料(確かめた日 2026-11-07) | 申込みの方法 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 千葉市 平和公園 合葬式樹木葬墓地 | 1体6万円、粉状焼骨は1体4万円。墓地管理料は不要(千葉市ページ) | 令和8年度は7月3日〜31日。平和公園管理事務所へ郵送・持参、または電子申請。抽選 | 市内に1年以上居住など。納めた焼骨は返還されない |
| 東京都立霊園 樹林型合葬埋蔵施設 | 令和8年度は多磨霊園2号基が遺骨1体9万5,000円(粉状3万1,000円)、雑司ケ谷霊園が1体11万2,000円(粉状3万7,000円) | 令和8年度は申込書を6月12日〜7月3日に配布。抽選 | 都内に3年以上居住など。遺骨の申込みは祭祀の主宰者 |
| 秋田市 平和公園合葬墓 | 焼骨1体につき1万7,000円。年間の管理手数料なし | 令和8年度は8月10日〜24日。窓口、郵送、電子申請。抽選 | 埋蔵申請は秋田市に住所または本籍がある方など。改葬申請は市営墓地からの改葬 |
3つとも、令和8年度の募集期間はすでに終わっています。次の募集の日程と金額は、各自治体の公式ページに出るまで確かめられません。
申し込む前に読む点
- 千葉市のしおりと東京都公園協会の手引は、いったん納めた遺骨は返還できないと書いています。千葉市は、改葬を予定している場合は事前に対象の焼骨が改葬できる状況にあることを確認するよう求めています
- 東京都の樹林墓地は、納骨袋に入れた遺骨を土に触れる形で1体ずつ埋蔵し、千葉市はコンクリートのカロートに共同で埋蔵します。同じ樹木葬でも、埋め方が違います
- 秋田市の令和8年度は、市営墓地以外(寺院墓地など)からの改葬申請は対象外でした
手元供養:自宅で保管する場合の決まり
東京都は、自宅の仏壇に骨壺に入った焼骨を置いている場合について、墓地埋葬法に「自宅での焼骨の保管については特に規定はありません」と案内しています。町田市は、墓地などに納めた遺骨を墓地を決めずに自宅へ引き取る場合は「改葬の手続きは必要ありません」とし、のちに納骨するときに備えて、墓地管理者に遺骨引渡証明書を出してもらうとよいと案内しています。
遺骨の一部だけを手元に置く分骨の場合は、分骨証明書の扱いが別になります。取り方は手元供養のための分骨のしかたにまとめました。
一方、手元に置いた遺骨をのちに樹木葬や合葬墓へ納めるときは、前の見出しのとおり、火葬許可証や埋蔵・収蔵証明書などが求められます。火葬許可証の保管場所は、早めに確かめておきます。
自分でできること、窓口に尋ねること
自分でできることは、次の4つです。
- 家族の間で、誰が祭祀を主宰して申込者になるかを話し合う
- 火葬許可証、墓地の使用許可証など、手元にある書類の場所を確かめる
- 気になる合葬墓や散骨の場所の自治体の公式ページを開き、募集の時期と条件を読む
- 遺骨が今ある墓地の管理者に、取り出す日と必要な証明書を尋ねる
窓口に尋ねることは、次の4つです。
- 遺骨が今ある市区町村に、改葬許可が要るか、手数料はいくらか、申請書の入手先はどこか
- 散骨のために取り出す場合の扱い(東京都の案内のとおり、市区町村で異なる)
- 散骨事業者に、約款、費用の明細書、散骨証明書の有無
- 行き先の管理者に、受入れを証明する書類(使用許可証など)の出し方
どの行き先が家族にふさわしいかは、公的な資料に答えがありません。宗教上の考え方や、遺骨をどう扱うかについての家族の思いは、この記事では判断しません。
次にすること
- 遺骨が今ある墓地の所在地の市区町村の公式ページで、改葬許可の窓口と書類を確かめる。例は横浜市の改葬許可申請
- 墓じまい全体の順番と、親族の同意の取り方は墓じまいの手順を7段階でで確かめる
- 行き先の候補ごとに、申込みの時期、居住の条件、返還の可否を公式ページで読む
- 確かめられなかった点は、市区町村と墓地の管理者に電話で尋ねる
この記事で確かめられなかったことは次のとおりです。寺院や民営の永代供養墓の契約内容、民営の樹木葬の条件、散骨事業者ごとの約款と散骨証明書の書式、海洋散骨の「一定の距離」の全国共通の数字です。
出典(確かめた日)
- e-Gov 法令検索 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)(2026年11月7日)
- 厚生労働省 散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)(令和2年度厚生労働科学特別研究事業の研究報告書より)(2026年11月7日)
- 東京都保健医療局 散骨に関する留意事項(2026年11月7日)
- 東京都保健医療局 墓地・納骨堂・火葬場 よくある質問(2026年11月7日)
- 横浜市 散骨するにあたっての手続について(最終更新日 2023年12月27日)(2026年11月7日)
- 秩父市 散骨行為の規制について(2026年11月7日)
- 熱海市 海洋散骨事業ガイドライン(平成27年7月1日)(2026年11月7日)
- 町田市 改葬許可申請(更新日 2026年7月10日)(2026年11月7日)
- 千葉市 千葉市平和公園合葬式樹木葬墓地(更新日 2026年6月23日)(2026年11月7日)
- 千葉市 平和公園合葬式樹木葬墓地使用者の募集 申込みのしおり(令和8年度)(2026年11月7日)
- 東京都 令和8年度 都立霊園の使用者を募集(2026年5月25日)(2026年11月7日)
- 東京都公園協会 都立霊園 樹林型合葬埋蔵施設 使用の手引(令和4年11月改訂)(2026年11月7日)
- 東京都公園協会 都立霊園 合葬埋蔵施設 使用の手引(令和4年11月改訂)(2026年11月7日)
- 秋田市 令和8年度秋田市平和公園合葬墓使用者募集(更新日 令和8年8月31日)(2026年11月7日)